Bill Oneが拓く経理業務の半自動化と強固な経理組織の実現
Bill Oneが拓く経理業務の半自動化と強固な経理組織の実現
総合建設業である東亜建設工業株式会社は、1963年よりシンガポールや中東に進出し、ODA工事を中心に海外事業を展開してきました。海外事業部門において、紙での請求書受領を廃止し、PDFでの受領と管理に取り組んできた同社は、現在ではデータ活用の段階へと進み、業務全体の最適化を推進しています。今回は、Bill Oneを活用した海外複数拠点における経理業務の自動化への動きについてお話を伺いました。
目 的
- 安定的なシステムでの運用を通じた長期的なコスト削減
- Bill Oneが生成する正確なデータを活用した半自動化の実現
- 海外複数拠点の請求書処理を標準化しクラウドで一元管理
課 題
- 自社開発の承認フローシステムによる運用の限界
- 非効率な既存のワークフロー
- 入力ミスと度重なる修正対応
効 果
- ペーパーレス化により月額132万円の人件費と外部保管コストを削減
- 承認から支払いまでのプロセスを半自動化し残業ゼロを達成
- 働く環境が改善され離職者ゼロの安定した経理組織を実現
[ お話を伺った方 ]
館 和夫 様 / Singapore Office, Senior Administration Manager
Latchoumy M. 様 / Singapore Office, Accounting Section of Administration Department, Accounts Manager

自社開発システムでの運用により二度手間や入力ミスが多発し、
IT人材の不在から運用継続にもリスクを抱えていました
事業内容について
館様 当社はシンガポールや他国ODA(政府開発援助)プロジェクトを中心に海外事業を展開しており、1963年の開始以来、54ヵ国で588件のプロジェクトを完工しています。現在は9ヵ国で18プロジェクトを展開中で、最長で5年に及ぶ大型案件も多く手掛けています。
非効率なワークフローと
活かしきれない請求書データ
館様 Bill One導入前は、約10年にわたり自社開発の承認フローシステムを使用していました。このシステムは主に承認用の資料を作成するためのもので、会計システムとは連携していませんでした。そのため、請求書を受け取るたびに、承認フローシステムに必要項目を手入力して承認用資料を作成し、最終承認を得た後に、それらの資料をダウンロードして会計システムにアップロードする必要がありました。また、承認用資料作成時に入力した各種情報も、会計システムへ再度入力しなければならず、自社システムを前提としたこの非効率なワークフローが大きな課題となっていました。
さらに、この自社開発の承認フローシステムは不安定で、自前のサーバー管理にもコストがかかっていました。最も頭を悩ませたのは、開発担当者の退職後に改修ができるIT人材が不在であったこと、また開発要件定義が引き継がれていなかったことから、将来的に運用が滞るリスクを抱えていた点です。
また、COVID-19の時期にBill Oneを導入し、PDFでの請求書受領とクラウド管理までは運用が定着していましたが、当時の承認フローシステムを前提とした既存ワークフローとの整合性が取れず、Bill Oneが生成するデータを十分に利活用できていないことも課題でした。
1分で複数の書類を同時にダウンロードできるようになり、
作業時間が大幅に短縮されました
データの利活用でプロセスを
半自動化し、業務時間を短縮
Latchoumy様 私はシンガポール事務所で働いて18年になりますが、COVID-19のパンデミックをきっかけにBill Oneが導入されるまでは、経理フローを変えることなく日々業務を続けていました。当時はロックダウンにより請求書の受け取りができなかったため、Bill Oneの代理受領機能に魅力を感じ、導入しました。
その後、Bill Oneをより効果的に活用するため、既存のシステムやワークフロー全体を見直し、受領からデータの利活用までフル活用できるようになりました。その結果、業務の在り方は大きく変わり、飛躍的に改善されたと感じています。
具体的な改善点として、以前の承認フローシステムでは、請求書や納品書などの書類一式を1件ダウンロードするのに約1分かかっていました。しかし、Bill One導入後、同じ1分で複数の書類を同時にダウンロードできるようになり、作業時間の大幅な短縮につながりました。
また、手入力による入力ミスを防ぐため、Bill One上で費用負担コードやジョブコード、プロジェクトナンバーなどの情報をプルダウンで選択できるよう事前に設定し、直接入力を極力減らすようにしています。その結果、入力ミスによる手戻り作業はほとんど発生しなくなりました。
さらに、Bill Oneで生成したデータをCSVでダウンロードし、会計システムや銀行のインターネットバンキングにそのままアップロードできるため、取り込み作業も大幅に効率化されました。
安定の経理組織、
快適な職場環境を実現

Latchoumy様 非効率な業務によって、当然のように月末月初は残業が増え、退職者の発生にもつながっていました。さらに、業務の中心がデータのダウンロードやアップロード、入力作業であったため、仕事を続けるモチベーションにつな
がらず、それを理由に退職するスタッフもいましたが、今では残業も退職者もなく安定した経理組織となっています。
月に約132万円のコストを削減できただけでなく、
組織の安定にもつながりました
Bill Oneがもたらした
直接的効果と副次的効果

館様 当社のシンガポール事務所は毎月約1,000枚以上の請求書を処理していますが、先ほど述べた内容以外に、直接的な効果として以下が挙げられると思います。
- 紙の請求書を受け取りスキャンする専任スタッフを置く必要がなくなったこと
- 請求書を保管する場所の賃料が不要になったこと
ペーパーレスと業務効率化の結果、月に約132万円のコスト削減を実現することができました。シンガポールは人件費も賃料も非常に高水準であり、こうした固定費を削減できたことは大きなメリットでした。
副次的な効果としては、人材育成にかかる時間が大幅に減ったことです。プロジェクト数はおかげ様で増加しており、プロジェクトごとに担当1名を増員していますが、BillOneを導入したことでオンボーディングに要する時間は数日で済むようになりました。さらに、業務を担当している人であれば誰でも新しいメンバーに教えられるようになった点も大きいです。以前はプロジェクトが増えると「業務を教える」という時間も追加でかかり、その分残業が増えていましたが、今ではその時間を含めても残業せずに対応できています。
これによりスタッフが以前より健康的に働けるようになり、何より空いた時間を本来取り組むべき重要な経理業務に充てることができるため、スタッフの業務の専門性を高められるようになったことが大きな副次的効果だと思います。このプロジェクトを始めた当初は目の前の課題解決を目的としていましたが、結果として組織の安定にまでつながり、DX本来の意義を実感できるようになりました。

今後もBill Oneをフル活用し、
グローバルで統一された業務基盤を確立していきたいです
シンガポールの成功を起点にケニア、
バングラデシュ、カンボジアへ展開
館様 社内の業務改善発表会の機会にBill One導入の効果を報告しました。この発表をきっかけに、他国オフィスでも導入検討が加速しています。
Bill Oneを導入した際には、他国展開を見据え、まずはシンガポールで実績を作ることを意識しました。各国で税制や請求書の原本保管義務は異なりますが、請求書のアップロードから承認フロー、見積書や注文書の管理、仕訳の方法までは共通の管理が可能です。PDFも一式ダウンロードができ、共通の会計ツールに取り込む仕組みさえ整えれば、シンガポールの運用を横展開できると考えていました。
Latchoumy様 シンガポールの実績をもとに、ケニア、バングラデシュ、カンボジアへの導入支援を行いました。当初は「紙のほうが見やすい」という声が多く、どの拠点も導入には消極的でした。もっとも、それは自然な反応で、誰しも慣れたやり方にこだわりたがるものです。しかし、シンガポールでの成功事例を共有し、ペーパーレス化や仕訳作業の削減といった効果が理解されると、各拠点でも導入への関心が高まりました。現在では、これら3ヵ国でもBill Oneを使った電子承認が定着し、かつて印刷した伝票に承認印を押して回覧していた時代から大きく前進しています。
現地と本社間でリアルタイムに
情報共有できる体制を構築
館様 月次処理における本社とのやり取りも大幅に効率化されました。従来は、本社から書類照会があるたびにメールで送付していましたが、現在はBill Oneを閲覧することで対応が可能です。
Latchoumy様 シンガポールでは2022年11月以降、紙の保管をほぼ廃止しました。Bill One上にすべてのデータがアップロードされているため、監査やIRAS(シンガポール税務当局)からの問い合わせにもシステム上で対応できます。万一に備えて一部は残していますが、それも月に1ファイルとごくわずかです。
更なる多拠点展開・自動化へ

館様 今後取り組んでいきたいこととしては2つあります。1つ目は、現在稼働している9ヵ国・18プロジェクトのうち、まだBill Oneを導入していない国々(フィリピン、インドネシア、ベトナムなど)への拡大です。2つ目は、Bill Oneと会計システムを連携させ、PDFのアップロードや仕訳の貼り付けといった手作業のステップを完全に自動化することです。
今後もBill Oneをフル活用し、グローバルで統一された業務基盤の確立を視野に、さらなるデジタル化を推進していきたいと思います。
※本資料は2025年10月に作成されました。掲載されている内容は作成時点の情報です。